クラウドDWH選定は「料金表を見る前」に用途から考える
クラウド型データウェアハウス(DWH)の導入を検討する際、「どれが一番安いか?」という視点で比較を始めてしまいがちです。ですが、本当に重要なのは「自社のデータ活用スタイル」に合った料金モデルと運用形態を選ぶことです。
例えば以下のようなシナリオでは、選ぶべきサービスや課金方式がまったく異なります。
- アドホック分析やPoCが中心:
→ 初期コストを抑えられ、使った分だけ支払うサーバレス型(Redshift Serverless、BigQuery Standard Edition、Snowflakeなど)が向いています。 - 毎日のバッチ処理や同時利用の多い業務:
→ 安定したパフォーマンスを確保できるコンピュート予約型(Redshiftクラスターモード、BigQuery Enterprise Edition、Synapse Dedicated Poolなど)が最適です。 - 全社での定期分析・BI活用:
→ スロットや仮想WHの定額確保により、運用予測がしやすくなります。
本記事では、上記の前提を踏まえたうえで、主要4製品(Amazon Redshift / Google BigQuery / Microsoft Azure Synapse / Snowflake)の最新の料金体系を詳しく比較していきます。
主要DWHサービスの料金体系比較表
サービス名 | 提供元 | 課金方式 | サーバレス対応 | 無料枠・試用 |
---|---|---|---|---|
Amazon Redshift | AWS | クラスターモード(RI/オンデマンド) サーバレス(RPU課金) |
あり(Serverless) | 試用あり、Spectrum別課金 |
Google BigQuery | Google Cloud | Standard(従量) Enterprise/Plus(定額スロット) |
常時サーバレス | 月1TBまで無料 |
Azure Synapse | Microsoft Azure | Dedicated SQL Pool(DWU単位) Serverless SQL(従量) |
あり(Serverless SQL) | 一部無料枠・試用あり |
Snowflake | Snowflake Inc. | 仮想WH単位(秒課金) +ストレージ |
あり(自動一時停止対応) | 無料トライアルクレジットあり |
Amazon Redshift:クラスターモードとServerlessの2方式
Redshiftは従来のクラスターベースのアーキテクチャに加えて、2022年よりRedshift Serverlessが利用可能になりました。ユーザーはノードやクラスターの管理を行わずに、クエリ実行に応じて必要なリソースが自動で割り当てられます。
- クラスターモード:オンデマンド or リザーブドインスタンスでノード単位の料金
- Serverless:RPU(Redshift Processing Unit)単位の時間課金。例:$0.375/RPU-hr
Google BigQuery:用途に応じてEditionを選択
BigQueryは完全サーバレスなDWHで、以下のような料金モデルが選べます。
- Standard Edition:従量課金($5/1TBスキャン)
- Enterprise / Plus Edition:定額でスロット(実行リソース)を確保
また、機能・SLA・可用性がエディションごとに異なるため、用途に応じて柔軟に選べるのが特徴です。
Azure Synapse Analytics:DedicatedとServerlessを選択可能
Microsoft製品と高い親和性を持つSynapseでは、2つのクエリエンジンが用意されています。
- Dedicated Pool:DWU単位でのインスタンス課金(例:DW100cで$1.5/時間)
- Serverless SQL Pool:データスキャン量に応じた従量課金($5/1TB)
Snowflake:秒単位課金+自動スケール
Snowflakeは仮想ウェアハウス単位で秒課金される従量モデルで、柔軟なスケーリングと自動一時停止機能により、無駄なリソース消費を最小化できます。
- Compute:X-Small〜4XLargeまで選択可(例:Mediumで$2/時間程度)
- Storage:$0.023/GB/月(圧縮済みデータ)
用途と運用方針で選ぶのがコスト最適化に繋がる
クラウドDWHは「最低価格のサービス」を選ぶのではなく、「最適な運用スタイルに合わせられるプラン」を選ぶことが成功のキーです。
- サーバレス型:予測不能な利用頻度・小規模PoCに最適
- 定額型:高頻度な分析や企業全体のBIツール利用に安定
先行試行やサイドプロジェクトで、実際のデータとユースケースを情報執って、コスト性やスケーラビリティを測りながら選定するのが実用的です。